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ロンドンには、日本と同じように公立や私立の様々な幼稚園や保育園があります。
けれど、ロンドンでは幼稚園的な機関にも保育園的な機関にも「ナーサリー( nursery )」という言葉が使われていたり、日本の幼稚園や保育園の一般的な通園時間とコンセプトが違っていたり、ちょっと分かりにくくなっています。
私がロンドンに着いて間もない頃は、限られた情報に翻弄されて、無駄に、本当に無駄に焦らされました。まだ娘が0歳で生まれたての時に「出産したらすぐに幼稚園のウェイティング・リストに載せてもらわないとね!」みたいな話をされて大いに焦り、冷や汗をかきながら区のサイトで希望の幼稚園について調べたら2歳になるまで申し込みできないとあり、大いに混乱した覚えがあります(単純に私立と公立の申込方法の違いを知らないだけだった)。
また、「私立の幼稚園は面倒見がいいけど、公立の幼稚園は放牧状態のバトル・ロワイヤル」という話しも耳にして悩んだこともありましたが、この噂は完全に固定観念の産物。よく考えれば当たり前なのですが、イギリスだろうが日本だろうが公立でも私立でもピンからキリまであり、良い公立幼稚園が並みの私立を凌ぐ質の教育をしてくれることもあれば、ずさんな私立幼稚園が子供の命に係わる事件を起こすこともあります。
そこで、このページでは、ロンドンの幼稚園や保育園についての詳細を正確に分かりやすくご紹介したいと思います。
参照ソースは、嫌な汗を無駄にかいた私の経験と、マートン・ロンドン特別区の公式サイトに掲載されている情報です。
Contents
ロンドンの保育園と幼稚園の分類

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イギリスでは、満5歳を迎えた9月から義務教育が始まります。小学校1年生にあたる「 Year One (イヤー・ワン)」と呼ばれる学年が義務教育のスタート。
したがって、就学前の幼児を受け入れる保育園や幼稚園は5歳未満の子供を対象としています(レセプションについては後述の「就学前教育と義務教育のはざま『レセプション』」参照)。
結論からまとめると、目的に応じて以下のように園を探すことになります。
- 保育園を探す場合
➡ 私立の day nursery を見つける。
- 幼稚園を探す場合
➡ 公立の pre-school (通称 school nursery 、 state nursery )を見つける。
➡ 私立の pre-school か私立の day nursery (通称 private nursery 、 independent nursery )を見つける。
公式のカテゴリー区分をもとにすると、ロンドンで就学前の子供を預かる施設は大きく2つに分類できます。いずれも「 nursery (ナーサリー)」と呼ばれることがあるので一見ややこしいですが、分類はシンプルです。
●日本の保育園に近い day nursery (デイ・ナーサリー)
- 公立のデイ・ナーサリー
- 私立のデイ・ナーサリー (通称プライベート・ナーサリー、インディペンデント・ナーサリー)
●日本の幼稚園に近い pre-school (プリスクール)
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
ロンドンの保育園 day nursery (デイ・ナーサリー)

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ロンドンのデイ・ナーサリーは、日本の保育園に類似するサービスを提供している施設。学期ごとのまとまったお休み(通称「ハーフ・ターム」)や夏休みなどの期間も開園しているため、保育園のように子供を預けることができます。
けれど、デイ・ナーサリーのことを日本の保育園と同じもの考えて「 full-day nursery (フルデイ・ナーサリー)」と呼ぶのは、厳密には誤り。と言うのも、ほとんどの私立デイ・ナーサリーでは通園日数を自由に選ぶことができ、半日( half-day session )の通園も可能だからです。
融通の利くデイ・ナーサリーが多く、日本の幼稚園のように午前中だけ週5日通わせたり、週に2回丸一日預けたりと、各家庭が通園形態を選択できます(大多数の園では週2回×半日以上の通園申込に対して入園を許可しています)。
デイ・ナーサリーには、以下の2種類があります。
- 区の運営している公立
- 一般法人が経営している私立
どちらも基本的には子供のお世話をすること(託児)がメインで、そこに教育の時間も含まれている場所です。
後述のスクール・ナーサリーに通う子供や、就学年齢が達した子供を対象とした学童保育サービス「 wraparound service 」を提供しているデイ・ナーサリーもあります。
公立デイ・ナーサリー(公立保育園)
収入が一定の基準を下回る家庭を支援する施設であることが多く、ロンドンで生活保護を受けずに暮らす家庭の選択肢としては一般的ではありません。経済的にひっ迫している家庭が、居住区を通して無料で子供を預けられるところです。
申し込みは各居住区を通して行います。
私立デイ・ナーサリー(私立保育園)

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一般的に共働き家庭が選択することが多いのは、こちらの私立デイ・ナーサリー。早いところでは生後6週目を迎えた赤ちゃんも入園できます。
申込時期は決まっていないので、随時連絡を取って見学と申し込みをします。空きがないこともあるので、気に入ったところがあれば早めに入園予約をしておくと安心です。
基本的な保育時間は、月~金曜日の朝8時~18時(概ねの施設は前後1時間ほどの時間外保育あり)。上記のように、通う日数や時間(半日か全日か)を自由に選べるところが多いので、幼稚園のように通わせることもできます。また、必要に応じて、朝・昼・夕飯も食べさせてくれます。
- 大手チェーンの運営する保育園
- 小規模な保育園
- エリート校受験を目指す保育園
など、経営形態も哲学も色々です。
ちなみに
私立のデイ・ナーサリーには、後述する私立の幼稚園と同じ「 private nursery 」や「 independent nursery 」の通称があります。
ロンドンの幼稚園プリスクール( Pre-school )

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プリスクールは日本の幼稚園に類似する幼児教育施設を指す名称です。名前の通り就学前の子供を教育するための施設です。
一般的に「幼稚園」という意味で現地の人が「 nursery (ナーサリー)」と呼ぶことが多いのもプリスクールに属する施設で、私立と公立があります。また、プリスクールの中には、公立と私立の小学校付属幼稚園が含まれています。
学期ごとにまとまったお休みとなるハーフタームや夏休みなどの期間は閉園となります。
ちなみに
プリスクールに名称が似ている「プレップ・スクール( prep-school )」は全くのベツモノ。後者は「 preparatory school 」の略で、7歳以上の子供が通う私立の学校のこと。エリート育成の中等教育機関パブリック・スクールなどへの入学を目指す初等教育機関です。
ロンドンの公立プリスクール(公立の幼稚園)

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公立のプリスクールは「スクール・ナーサリー( school nursery )」や「ステイト・ナーサリー( state nursery )」とも呼ばれています。
公立小学校にある幼稚園生のためのクラスです。
こちらは、通える年齢が満3歳からと決まっていて、入学する時期から遡って1年以上前の決まった時期に居住区を通して申し込みをする必要があります。無料で通えるためとても人気があり、地域や学校によっては定員オーバーが当たり前の状況。必ず入園できるという保証はありません。
満3歳から通うナーサリー・クラス( nursery class )と満4歳の9月から通うレセプション・クラス( reception class )の2つの学年に分かれています。
園で過ごす時間は、週15時間。1日3時間(午前か午後)×5日という形態のほか、1日5時間×3日など、園によって通園形態が決まっています。
公立幼稚園の体験レビューは、こちらの記事に詳しく掲載しています。
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ロンドン幼稚園体験レビュー(公立編)
私の娘は、3歳2か月からロ ...
また、公立幼稚園の申し込み方法については、こちらの記事に詳しく載っています。
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ロンドンの公立幼稚園入園手続き
jarmoluk / Pixabay ( ...
ロンドンの私立プリスクール(私立の幼稚園)
私立のプリスクールは「プライベート・ナーサリー( private nursery )」や「インディペンデント・ナーサリー( independent nursery )」とも呼ばれています(上述の保育園的な機関、私立デイ・ナーサリーと同じ通称。要は「私立」ということです)。
通学できる年齢は幼稚園によってさまざまで、満2歳ごろから通えるところが多いです。人気のある幼稚園は定員がすぐに埋まってしまうので、人気のある園はかなり早くから見学と入園の申し込みをしておく必要があります。これが、冒頭の「ロンドンで人気のある幼稚園に入れたいときは、生まれてすぐに申し込みをするんだって!」と言われているタイプの幼稚園です。
入園時期は各自が幼稚園と相談して決めるため、バラバラ。したがって、日本の入園式に相当するものはありません。
私立幼稚園は経営理念や教育方針がバラエティ豊か。
- 進学校へ受験を目指すための幼稚園
- シュタイナーやモンテッソーリなどの教育哲学を掲げる幼稚園
- ゆったりと子供を遊ばせる自由保育の幼稚園
- 日本語幼稚園
- 私立小学校付属の幼稚園
など、さまざまです。
一般的な幼稚園では、通う日数が週2日~5日の間で選べるようになっています。幼稚園にいる時間は1日2時間半~4時間ほどですが、通う時間帯を午前か午後か選べる幼稚園もあります。
私立幼稚園のレビューについてはこちらの記事に詳しく掲載しています。
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ロンドン幼稚園体験レビュー(私立編)
ロンドンの幼稚園情報は色々 ...
就学前教育と義務教育のはざま「レセプション」

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レセプションは、プリスクールに含まれる小学校付属の幼稚園クラス。
公立のプリスクールには以下2つの学年があります。
- 満3歳から通えるナーサリー・クラス
- 満4歳になって迎える9月から通えるレセプション・クラス
後者のレセプション・クラスは、義務教育の始まる小学校1年生( Year 1)の準備クラスでもあり、実質的には義務教育の一部に組み込まれているような構造になっています。
通いたい小学校に入学するためには、その小学校のレセプション・クラスに入園する必要があります。
ほぼすべての学校に定員枠があるため、必ずしも希望する学校のレセプション・クラスに入れるわけではありません。
私立と公立では、申し込み方法や選考基準も異なります。
- 私立 ➡ 直接学校へ申し込み方法を確認。
- 公立 ➡ 居住区を通して申し込み手続き。
申込期限はいずれも早く、1年ほど前になっています。
公立の場合は、ナーサリー・クラスに入園できていても、改めてレセプション・クラスへの申し込みが必要です。ある小学校のプリスクール・クラスに通っても、選考結果によって別の小学校付属のレセプション・クラスに転園しなければならないケースがあります。
人気のあるロンドンの幼稚園
実際にロンドンで就学前教育が本格的になるのは、子供が3歳を迎えるころから。
一般的に人気のある幼稚園は、
- 進学校に強いコネクションのあるプライベート・ナーサリー
- 特別な教育法を掲げているプライベート・ナーサリー
- キリスト教系のプライベート・ナーサリー
- Ofsted 評価の高いスクール・ナーサリー*
などです。
*Ofsted とはイギリスの学校を評価する教育水準監査院。高評価の幼稚園は進学系私立幼稚園をしのぐほどの人気です。
ロンドンの幼児教育は、公立は無料、私立は補助付き

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ロンドンでは3~4歳の子供に早期からの幼児教育を推奨し、各居住区を通して週15時間×38週間、年間570時間分の就学前教育に対して経済支援をしています。
公立プリスクールの場合は週15時間通園のため幼稚園費用は無料となり、私立プリスクールや私立デイ・ナーサリーの場合はそれに相当する金額が園ごとに計算されて割引となります。
また、イギリスには、チャイルド・マインダーと呼ばれる地方自治体に登録したプロの保育士がいます。子供を家に預かって託児サービスを提供するチャイルド・マインダーは、幼稚園や保育園に入れない子供たちの受け皿でもあり、また、信頼できるベビーシッターとしても活躍しています。このチャイルド・マインダーに子供を預けて就学前教育を託す場合も、同じ公的経済援助を受けることができます。
預け先別の経済支援方法
- 公立幼稚園 ➡ 週15時間×38週間、年間570時間の支援=無料で通園できる
- 私立幼稚園 ➡ 園ごとに計算され、支援相当分が月謝から割引される
- チャイルド・マインダー ➡ 時間数に応じて支援分が利用料金から割引される
ロンドンの保育園と幼稚園の問題
というわけで、イギリスの保育園や幼稚園には色々な種類があり、子供を預ける形態や時間にかなりの自由があります。
上記に加えて、
- 住み込みのベビーシッター
- 通いのベビーシッター
- クレッシュと呼ばれる一時保育所(店などに併設)
- チャイルド・マインダー
などの活用も普及しているため、一見子育て体制がとても整っているように感じられるかもしれません。
しかし、「バリエーションの豊かさ=積極的に選べる自由」と手放しで評価することはできません。
例えば、ロンドンの私立幼稚園や保育園の費用は他のヨーロッパ諸国に比べて桁違いに割高です。子供を保育園に預けながらフルタイムで働く場合、お給料が平均的な額であれば保育費と相殺して赤字になることも覚悟しなければならないほど。そのため、中流家庭であっても、高い保育費を押さえるために週2日は会社で仕事をして、残り3日は在宅勤務で安いベビーシッターを雇う、という親もいるわけです。
また、将来は公立の優良小学校で教育を受けさせようと思っても、ポストの少ないレセプションの選考に通らなければ実現は不可能。公立小学校のレセプション・クラスの選考には、子供の能力すら関係ありません。
では私立優良校のレセプションに行けばいいかというと、当然ながら学費は跳ね上がってしまいます。じゃあ、イギリスで認めている家での教育、という手もありますが、当然ながらすべての親が子供に教えられるだけの基礎学習能力を身につけているわけではありません。
つまり、お金がなければ幼稚園の時点で子供の受けられる教育の幅が制限される可能性がとても大きいのです。
日本の保育園や幼稚園事情はとても厳しいですが、ロンドンにも解決すべき深い問題があると言わざるをえないのが現状です。