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『リメンバーミー(COCO)』のレビュー|子供と観る映画

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映画『リメンバー・ミー』の感想とレビューをシェアしたいと思います。

『リメンバーミー』は、ピクサー&ディズニー製作の、楽しく感動的なアドベンチャー・コメディ。子供はもちろん、大人にも観てほしいすばらしい映画です。

アカデミー賞やゴールデングローブ賞で最優秀アニメ賞に輝いたのをはじめ、数え切れない賞を受賞したのも納得のクオリティ。まさに、新たな名作と言える映画です。

さあ、見ていきましょう。

基本データ

  • 原題: 『 Coco 』
  • 製作: 2017年、アメリカ、1時間45分
  • 監督: リー・アンクリッチ( Lee Unkrich )、エイドリアン・モリーナ( Adrian Molina )
  • 出演: アンソニー・ゴンザレス( Anthony Gonzalez )、ガエル・ガルシア・ベルナル( Gael García Bernal )、ベンジャミン・ブラット( Benjamin Bratt )ほか

 

あらすじ(ネタバレなし)

舞台はメキシコ。12歳の少年ミゲルは、代々靴をつくってきた大家族の一員。ファミリーの大きな愛と固い絆に守られて幸せに暮らしています。

ミゲルには大きな夢がありました。いつか、伝説の歌手エルネスト・デラクルスのようなミュージシャンになることを夢見ていたのです。けれど、ミゲルの家では音楽は絶対的なタブー。ひいひいおばあちゃんの代から、音楽を奏でることはもちろん、それを聴くことさえ禁じられていました。ミゲルの大きな夢は、同時に大きな悩みでもあったのです。

そんな中、死者がこの世にもどるとされる「フィエスタ・デ・ムエルトス」のお祭りの日がやってきました。町では音楽コンクールが開かれ、ミゲルも参加を決意します。コンクールに出るにはどうしてもギターが必要。そこで、ミゲルは歌手デラクルスのお墓に祀ってあったギターを借りることにしました。

ところが、ギターには呪いがかかっていたため、ミゲルは死者の世界に迷い込んでしまいます。無事に元の世界に戻るには、先祖の祝福を受けなければなりません。ミゲルは自分のひいひいおじいさんを探しに出かけるのですが……

 

見どころ

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家族の絆

『リメンバー・ミー』のテーマの1つは、家族賛歌。ミゲルだけでなく、ミゲルの家族がストーリーの主役になっています。

ミゲルの生活する家には、お父さんお母さんがいるだけではなく、おばあちゃん、ひいおばあちゃん、おじさん家族が一緒に住んでいます。隠し事をするのさえ難しく、時に煩わしいほど、いつもファミリーの誰かがいる家……。帰宅時は自分でカギをあけて一人で留守番をする現代っ子の姿とは、対照的です。

「個人」が強く意識されるようになり、人との結びつきが薄まってしまった現代。伝統的な大家族は、日本を含めて世界中でさらに減りつつあります。家族の形も変化し、家庭の在り方も多様化してきています。

「ただいま」と安心して帰りホッとできる家は、文化や習慣を超えて、多くの人が求めてやまない愛おしい場所。『リメンバー・ミー』が語る家族の姿は、孤独になりがちな現代を生きる私たちの心に、温かい灯をともしてくれます。

グローカル

映画の中で家族が主役となっているのは、家族というテーマを取り上げているからだけでなく、さらにその後ろにある大きなテーマを語るための構成と言えます。

そのテーマを一言でいうなら、グローカルの精神。『リメンバー・ミー』には、『モアナ』や『ムーラン』に通じるような「文化の違いを尊重しよう」という思いが込められています。

映画は、メキシコに住むミゲルの家族の姿を通して、「世界各地には多種多様な伝統や文化があるけれど、温かい家庭をいつくしむ心は世界共通である」と語り、「私たちはこんなに違うけれど、こんなに似ている」というメッセージを送っているのです。

グローバル化の進む現代だからこそ、地球上に存在している多種多様なローカルな文化を守り尊重し合い、共に生きていこう。『リメンバー・ミー』には、そんな願いが込められています。

参照ソース(ビデオ記事のため、ソースリンクをクリックすると音が出るのでご注意ください。)
La Repubblicaのビデオインタビュー記事『 'Coco', regista e produttrice: "Siamo simili nelle nostre diversità" 』(2017年12月13日投稿、2018年3月5日参照)

色鮮やかな世界

映画の見どころの一つは、ラテンアメリカの目の覚めるような色彩の美しい映像

その名前とは裏腹に、死者の日はまぶしいほどの明るい色に包まれています。同じく魂を迎える日本のお盆とは、全く対照的な色彩感覚です。

センジュギクの花のまぶしいオレンジ色や、色とりどりのランプが溢れる町や墓地はもちろんのこと、ミゲルがさまよう死者の世界の色鮮やかな街並みは圧巻です。ブラジルのファベーラの彩度をぐっと上げて、それぞれの壁をランプにしてしまったような、きらめく夢の国が目の前に広がります。

映画館ではなくお家鑑賞の場合は、ぜひ高画質のブルーレイで観ることをおすすめします。

 

2017年の最高峰に輝いた映画音楽

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音楽監督は、『ズートピア』や『インサイド・ヘッド』などでも音楽を担当したマイケル・ジャッキーノです。

音楽自体がストーリーの中で重要な役割を担っているだけあって、『リメンバー・ミー』はサントラもすばらしく充実しています。とりわけ注目を集めたのは、映画のタイトルと同じ曲名の『リメンバー・ミー』。第90回アカデミー賞でみごと歌曲賞を獲得した名曲です。

やわらかいメロディにのせた、大切な人を想う歌。心にジーンと沁みるようです。

 

まとめ

評価

10/10

家族や人間愛という普遍的なテーマ、グローカルの視点、ミゲルの力強さ、魅力的な登場人物によるエンターテイメント、といったストーリーのすばらしさに加え、映像や音楽のクオリティの高さもあり、満点です!

オバケが怖い小さなお子さんには、コミカルとはいえガイコツ姿の登場人物にぎょっとしてしまうことおあるかもしれません(私は5歳の幼稚園児と観ましたが、まったく問題ありませんでした)。心配がある場合は、お子さんに映画のトレーラーを見せて事前に反応を観察しておくといいと思います。

『リメンバー・ミー』は、「子供の映画」とくくるのはもったいない映画。大人にも断然おすすめです。ぜひ、あなたの大切な人と一緒に観てください!

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