ベルギーはビール王国。生産しているビールの種類は軽く1000を超えます。
ひとくくりにして「ベルギービール」や「ベルジャンビール」と呼ばれるものの、バリエーションの豊かさはハンパありません。
甘いものから酸っぱいものまで、アルコール度数がほぼないようなものから10度以上のパンチの効いたものまで、色も味も製造方法も多種多様です。
想像の斜め上をいくようなビールを飲む羽目にならないよう、ベルギービールの種類を知っておくと安心です。
どんなベルギービールがあるのか簡単にまとめてみたので、一緒に見ていきましょう。
この記事はアルコールの入ったベルギービールの記事です。未成年者の飲酒は法律で禁止されています。当記事は食文化としてのベルギービールについて解説するものであり、飲酒を勧めるものではありません。
Contents
ベルギーでのシェア1位、ピルス
ピルス( Pils )は、ベルギーのビール生産シェア75%を占めるNo.1の大衆ビール。
ピルスナーとも呼ばれています。
日本で主流のラガービールに似ていて、ライトな味わい。チェコのビール製法がもとになっていて、酵母を低温発酵させて作ります。
ピルスの概要
- 色:透明の金色
- 味と香り:軽い苦みで飲みやすい。
- アルコール度数:4.5~5.5%ほど
- 飲み方:キンキンに冷やすのがベスト。生→瓶入り→缶入りの順においしい。
- 代表的なピルス:Stella artois、Jupiler、Maes
現地での値段はミネラルウォーターより安いほど。ベルギーのストリートフード、フライドポテトと合わせるのも王道です。
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ベルギービールの代名詞、修道院ビール
ベルギービールの代名詞といえる、修道院ビール。名前の通り、修道院と関係のあるビールです。
- アビービール( Bière d'abbaye )
- トラピストビール( Bière Trappiste )
と、2つのビールに分類できます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
アビービール
アビービール( Bière d'abbaye )は、修道院(アビー)の伝統をくむビール。アベイビール、修道院ビールなどとも呼ばれています。
必ずしも修道院で作っているわけではなく、修道院に伝わるビールレシピをもとに、民間のメーカーが作っているビールです。
そのため、なんでもかんでもアビービールと呼んでしまう状況を危惧して、醸造業者組合が一定の条件を満たすアビービールの認定をしています。
ラベルに以下の表示があれば、認定済みのアビービールということになります。
- Bière belge d'Abbaye reconnue
- Erkend belgisch Abdijbier
トラピストビール
トラピストビール( Bière Trappiste )は、キリスト教トラピスト会の修道院が作るビールです。
ビール醸造にはとても厳密な規則があり、認定を受けたトラピストビールには ATP(Authentic Trappist Product)というラベルがついています。
世界には11のトラピストビールがあり、そのうち6つがベルギーのトラピストビール。日本では、Chimay(シメイ)などが比較的てに入りやすくなっています。
代表的な修道院ビールのスタイルとブランド
アビービールやトラピストビールは、種類がいろいろ。味・色・アルコール度数にかなりの幅があります。そこで、代表的なビールのスタイルを上げていきましょう。
代表的な修道院ビールのスタイル
- ブロンド:黄金色のビールで、苦みが強め。
- ブラウン:ちょっぴり甘味を感じる赤褐色のビール。苦みが少なく豊かな風味。
- ダブル:アルコールが高め(6℃前後)の茶褐色のビール。アルコールの高さはさほど感じず、まろやかな味わい。
- トリプル:アルコール度がとてつもなく高い(7~10℃)黄金色のビール。アルコールや苦みをかなり強く感じる。
いずれも香りや味の深みを楽しむビールなので、ワイングラスのように口の大きなグラスに入れていただきます。
代表的なアビービールとトラピストビール
- アビービール:Grimbergen、 Leffe
- トラピストビール: Achel、Chimay、Oval、Rochefort、Westmall、Westvleteren
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暑い夏といえばの、白ビール
修道院ビールに負けず劣らず人気なベルギービールと言えば、白ビール( Bière blanche )。別名ホワイトビールとも呼ばれます。
ホワイトと言っても真っ白なわけではなく、ラガービールに比べて黄色のトーンが淡く、白っぽく濁った色をしています。
とにかくさっぱり爽やかなビールで、ビールが苦手な人にも飲みやすい味と香り。
その理由は、白ビール独特の製法と原料にあります。
- 酵母を高温で発酵させる(上面発酵)
- 原料に小麦やハーブやスパイス(コリアンダーやオレンジピールなど)を使う
白ビールの歴史はとても古いものの、廃れて生産が激減した時期もありました。最近のホワイトビール人気は、20世紀中旬のリバイバルによるもの。まさに時代の求める味といったところでしょうか。
お値段もお手頃、気取らずカジュアルに飲みたいビールです。
白ビールの概要
- 色:ちょっと濁った薄黄色
- 味と香り:苦みがなく、酸味のある爽やかな味。酵母やハーブの香りがフルーティーで爽やか。
- アルコール度数:5%ほど(フルーツビールは2~3℃ほどのものも)
- 白ビールの飲み方:キンキンに冷やすのがベスト。専用のビールグラスで飲むのがベスト。生→瓶入り→缶入りの順においしい。
- 代表的な白ビール:Hoegaarden、Vedett White, Mater Witbier
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ベルギービール上級者の、ランビックとグーズ
ランビック( Lambic )とグーズ( Gueuze)は、どちらもベルギービール上級編のビールです。
ビールという概念を頭から消去して飲まないと、その独特な味と香りにむせ返ります。
ランビックは、野生酵母を使った自然発酵ビールの総称。ベルギーの特別な地域で作られています。その製法は、ヨーロッパでもで最古の伝統を誇る一つ。
グーズは、このランビックをもとに作ります。具体的には、熟成させた古いランビックと若いランビックを混ぜて、シャンパンボトルに詰めています。
とにかく自然発酵なので、同じメーカーでもつねに同じ味を再現できるとは限らず、ワインのように毎年味に差が出ます。
ランビックの概要
以下は、フルーツを加えていないプレーンのランビックのデータです。
- 色:ちょっと濁った薄黄色~飴色
- 味と香り:すっぱい。1日中履いていた靴下の香り。
- 飲み方:あまり冷やしすぎない。専用のビールグラスで香りを楽しむ。
- 代表的なランビック:Cantillon, Mort subite, Belle-Vue
珍味というにふさわしい味で、一度飲むとランビックの奥深い世界にはまります。マニアックなファンも多く、ベルギーにはランビック専門カフェもあります。
クリークとフルーツビール
クリーク( Kriek )は、ランビックとサクランボから作るチェリービール。
ランビックの中にサクランボを丸ごと入れて発酵させるので、とてもすっぱく、その色はきれいなルビー色。ビールとはいうものの、一般的なラガービールからは想像もつかない色と味をしています。
伝統的なクリークのほかにも、
- シロップを足して甘みを強くしたクリーク
- サクランボの代わりにフランボワーズやリンゴなどを入れたフルーツ・ランビック
があります。
クリークの概要
- 色:濃いルビー色
- 味と香り:すっぱい。サクランボのフルーティーで爽やかな香り。シロップ入りは甘い。
- 飲み方:しっかりと冷やす。専用のグラスで飲むと、より香りを楽しめる。
- 代表的なクリーク:Liefmans, Lindemans, Tiemmermans
クリークやフルーツ・ランビックに似ているようで、まったく味の違うフルーツビール( Bières fruitées )*もあります。
ベースはランビックでなく、白ビール。そこに果汁を加えて作ります。
白ビールはランビックに比べて大量生産しやすいので、安価でカジュアル。
お味の方もカジュアルです。ランビック独特の深みが消えるので、まるでジュースのような味がします。
白ビールベースの代表的なフルーツビール
Hoegaarden
*フルーツビールは、果汁を加えたビールのの総称。クリークやフルーツランビックも、フルーツビールと呼ばれることがあります。
まとめ
以上、ベルギービールの種類でした。
ベルギービールと言っても、その味は千差万別。自分の好みを見つけたり、季節に合った味を見つけたりと、いろいろ楽しんでみてくださいね。