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『そして父になる』のレビュー|家族について、2時間続けて悶々と悩む

映画『そして父になる』のレビューです。

国内外で高い評価を受けている是枝監督が、家族のあり方について問いかけている映画『そして父になる』。

映画は、子どもを軸にして「家族とは?」というテーマを描いています。そのため、親となった人はもちろん、誰かの子どもである私たち全員にとって観る価値のある作品です。

空気のように当たり前に自分の周りに存在する家族がいること。その幸せをあらためて考えさせてくれます。

 

基本データ

  • 原題: 『 そして父になる』
  • 英語タイトル: 『 Like Father, Like Son 』
  • 製作: 2013年、日本、2時間1分
  • 監督: 是枝裕和
  • 脚本: 是枝裕和
  • 出演: 福山雅治、尾野真千子、真木よう子、ほか
  • 年齢参照:なし
  • 賞:カンヌ国際映画祭審査員賞(2013年)、日本アカデミー賞優秀作品賞(2014年)、ほか

 

あらすじ

野々宮良多・みどり夫妻は、息子の慶多と幸せに暮らしていた。良多は忙しくも建築家としても順風満帆。みどりは慶多の子育てに専念している。

ちょうど小学校の受験を滞りなく終えたころ、慶多の生まれた病院から連絡があった。病院に訪れた夫妻を襲ったのは、慶多が自分たちの子どもではないかもしれないという衝撃的な知らせだった。

検査の結果、慶太は夫妻の子ではなく、出生時に赤ちゃんの取り違えが起こっていたことが判明。野々宮家の実の子は、斎木家の長男として育てられていた。

野々宮、斎木の両家は、容赦ない現実に直面して苦しみ煩悶する。苦渋の選択を迫られた二家族は、交流しながら解決策を模索する。子どもを交換して実の子を育ててゆくのか、血がつながらなくとも今まで育ててきた子どもを我が子とするのか……。

 

見どころと解説

架空のお話ではない

『そして父になる』は、新生児取り違えという悲劇をきっかけに、あなたにとっての家族とは何であるかを大いに考えさせる映画です。

映画の背景となっている赤ちゃんの取り違えは、子どものいる親ならば想像もしたくないような、けれど起こりうる事故。おそろしいことに、この悲しい事件は完全なフィクションではありません。

基となっているのは、ノンフィクションの文学作品『ねじれた絆―赤ちゃん取り違え事件の十七年』。著者であるジャーナリストの奥野修二氏が、1977年に発覚した新生児取り違い事件を描いています。

私も野々宮家の長男慶多と同い年の子を育てる母。映画の始まりから終わりまで、「自分の家族が同じ状況に置かれたら、どうするのだろう?」と自問し続ける2時間でした。

あなたの子、とは?

自分の子は、自分の子。子どもを愛し育てることはあまりに自然で、私は我が子をなぜ「自分の子」と認識しているのか立ち止まって考えたことがありませんでした。

血のつながりが親子を結びつけるのか、はたまた共に過ごした時間がそうさせるのか?あなたが子どもを愛おしいと思う気持ちは、どこから来るのか?

映画は「万人の正解」を提示することなく、終始、鑑賞者一人ひとりに答えを問いかけます。

この子とあなたを結び付けるものは何か?

自分のもとに来るのが当たり前のように生まれてきてくれて、当たり前のように家族の一員となってくれて、当たり前のように一緒に暮らしてくれている。

映画を観ていると、子どもが「当たり前の家族の一員」として家庭にいる幸せを、あらためて思い知らされます。

あなたの家族、とは?

子どもとの関係とは、つまり、家族という関係。映画は、あなたとあなたの子の関係を問いかけるだけでなく、あなたにとって家族とは何であるのか?という問いを投げかけ続けます。

  • あなたと両親との関係
  • あなたとパートナーとの関係
  • あなたが家族と過ごす時間
  • あなたの家族が優先させる幸せ

過去に一枚岩のように強固にそびえていた「家族モデル」は、多様化する現代では1つの形であるに過ぎません。

  • ママとパパが離れて暮らす子
  • 新しいママと暮らす子
  • パパが家庭に二人いる子

家族の幸せの答えは、一つひとつの家族の中にあるけれど、私たちがそれを意識することはあまり頻繁にありません。普段の生活に埋もれて当たり前となってしまっている大切なこと。是枝監督の作品はそれをほじくりだして、私たちの目の前に突きつけています。

 

まとめ

痛ましい虐待のニュースが嫌というほど聞こえてくる昨今、私たちは子どもがそこにいる幸せの大きさを忘れがちになっているのかもしれません。

自分の家族が大切にしていること、自分と家族を強く結びつけているもの……。あなたにとって家族とは何ですか?

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