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ブライアン・メイとアナグマ

2013年に白熱したイギリスのアナグマ間引き論争。2016年現在も政府のアナグマ間引き計画の続行に反対する運動は盛んに続けられています。

その抗議活動の中心となっている1人が、伝説のロックバンド「クイーン」のギターリスト、ブライアン・メイ氏。ミュージシャンであり動物愛護者でもあるメイ氏には、もう1つ天文学博士という別の顔があります。(イギリスの学会でご縁があってから、主人と私はすっかりメイ博士の人柄に惚れ込んでしまいました!)

このページでは、個人的に思い入れのあるブライアン・メイ博士とアナグマ狩りのお話しを紹介します。

バジャーバジャーバジャー

Youtubeで音楽を聞きながら掃除をしていたら、自動再生ですごい曲がかかってきました。ちょっと聴いてみてください。

クイーンのパロディ?と思った曲調の通り、イギリスの伝説的なバンド「クイーン」のギターリスト、ブライアン・メイ氏が作成に携わっていました。

調べてみたら、このビデオ、イギリスのアナグマ愛護運動の真面目な目的で作成されたものでした。

イギリス人にとって特別なアナグマ

このビデオの動物はアナグマ。ヨーロッパアナグマ(学名 meles meles )という種類のイギリス固有種で、白と黒のしましまの可愛い顔がトレードマークです。

アナグマはイギリス人にとって特別な存在。キツネとともに、イギリスの田園風景のシンボルともいえる動物で、童話などにも登場する人気者です。

例えば、ビアトリクス・ポター作の『キツネどんのおはなし』(The Tale of Mr. Tod、1912)に登場するトミー(Mr. Tommy)や、ロアルド・ダール作『父さんギツネバンザイ』(Fantastic Mr Fox1970)のアナグマ(Badger)など、可愛いアナグマの姿が描かれています。

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Tale of mr tod tommy brock by Siawase (CC0) 

アナグマの間引き計画

しかし、1970年代にアナグマから結核菌が発見されたことから、アナグマは結核菌を媒介する野生動物とされました。

その結果、畜牛への結核感染拡大を危惧した農場経営者、科学者、政治家などが対策を計ります。議会を通過した計画案は、アナグマを狩って間引きするというもの。間引き計画が進むと、最終的にイギリスの各地に住むアナグマの70%以上が狩られることになると言われています。

間引き計画が発表されるやいなや、イギリスでは議会への請願を含むさまざまな抗議活動が白熱しました。2013年にイングランドの2つの地域で間引きのパイロットプランが実行された後も、アナグマの「虐殺」に反対する運動は都市部を中心に活発に続けられ、現在も議論が交わされています。

アナグマを護るブライアン・メイ氏

イギリスでアナグマ間引き計画への反対活動を行う団体は数多くあり、これらの団体は Team Badger という連合を作っています。こうしたイギリスでの抗議運動の中心となっている1人が、クイーンのギターリスト、ブライアン・メイ氏。

メイ氏は世界屈指のロックギターリストであり、天文学博士であり、動物愛護活動家。アナグマだけでなくキツネなど野生動物全般の愛護活動をしていることで有名です。メイ氏は、アナグマ間引きに反対する主な理由を以下のように挙げています。

  • アナグマの間引きは牛を結核感染から守る有効な手段ではない
  • アナグマの間引きの方法が非人道的

実際、イギリスでは過去にも5千万ポンドがつぎ込まれた間引きが行われ、1万1千頭ほどのアナグマが殺されているというデータがあります。しかし、科学的な検証では絶対的な効果が認められておらず、アナグマの間引きは牛の結核感染予防には有効とは言いきれない現状です。

間引きに対してメイ氏が求めるのは、ワクチンによる結核感染予防。アナグマと同じく牛が苦しむことも望まないメイ氏は、ワクチン接種によって牛の結核感染を予防しようと、イギリスだけでなくEUの諸機構などさまざまな機関に働きかけています。

ブレグジット後の運動でも知られる通り、イギリスでは10万人を超える署名が集められた請願書について議会で討議されることになっています。現在もイギリスではアナグマの間引き中止を求める署名が集められています。

請願書「PetitionEnd the badger cull instead of expanding to new areas」の署名サイト
(イギリス国籍、またはイギリスの住民票を持つ人のみ署名できます)

自然の大きさと小さな人間のエゴ

ノーベル賞を受賞した科学者たちのことばにもあるように、この世界の神秘を研究する科学者の多くは、人間という存在の小ささを身につまされています。メイ博士の野生動物愛護活動は、大いなる自然をコントロールしようとする人間の傲慢や自分勝手さに警鐘を鳴らしているのでしょう。

としみじみ思いを巡らせたきっかけは、「バジャーバジャーバジャー」のビデオでした。

 

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