王立ラーケン温室( Serres Royales de Laeken )は、ベルギー王室の所有するラーケン王宮の温室群。ブリュッセル北部にあります。いつもは門が閉ざされていますが、年に1度期間限定で公開される特別な温室です。
ベルギー人の「すばらしい場所よ!」という称賛と推薦の声を聞きながらも、「期間限定」というところがなんだか商売っぽいなぁ、とフトドキなことを思いつつ、子どもと一緒に行ってきました。
結論から言うと、すごい!行ってよかった!王さま、疑ってごめんなさい。
19世紀に建てられた優雅な温室と、圧倒されるような花や植物とのハーモニーがたまらない場所でした。
ということで、写真もいっぱいでステキな温室をご紹介したいと思います。
アール・ヌーヴォーの草分けとなった温室
美しいと誉れ高いラーケン王宮の温室は、19世紀後半に造られました。建設が始まってからすべての温室群が完成するまでには、実に30年もの歳月が費やされています。
デザインしたのは、宮廷お抱えの建築家だったアルフォンス・バラ(Alphonse Balat )氏。ベルギー2代目国王レオポルド2世のために、ラーケン王宮の一部として温室を設計しました。
19世紀の建築技術が駆使され、当時は新素材であった鉄とガラスでつくられた温室。アール・ヌーヴォー様式というよりも、その先駆けとして大きな影響を与えた建築物です。
シンプルでエレガントな曲線に心を鷲掴みにされます。
期間限定の一般公開
そのような文化的な背景も含め、とにかく一見の価値が大ありの温室なのですが、「ロワイヤル」という名前の通り王家の所有物。普段は一般公開されていません。
しかし、そこはさすがの王さまで、1年のうち約3週間を一般市民に公開する期間としています(例年春季。2017年は4月14日~5月5日公開)。
微々たる入場料こそありますが、この一般公開は100年も前からずっと続けられているというのですから驚きです。筋金入りのノブレス・オブリージュ。
温室見学
見学できる温室は1つではなく、大きな敷地にいくつも建てられている温室群を順路に従って回ります。
かなりの距離を歩くので、小さなお子さん連れならばベビーカーで行くのがおすすめです(内部はバリアフリーではありませんが、ベビーカーは数台見かけました)。
プロローグ
入場するためのエントランスは1つだけ。
セキュリティ・チェックを通ってから、ゲートで料金を払って入場します。
宮殿の前を通ってぐるっと歩いていくと、大きな建物がどーんと見えてきました。ショップやカフェが入っていますが、まずは素通りして進みます。
ほぼ空っぽの温室に見とれながら進んでいくと、屋外へ。
お城や庭を眺めながら温室へ向かいます。
こんな広い庭があるなんて、王さまっていいなぁ……と歩いていると、見事な桜!
ピクニックマット広げてお花見したい!と大和魂が騒ぐのもつかの間。王宮近くにある極東博物館の「日本タワー」が見えてきます。計算しつくされた配置が、なんとも雅です。
なぜ山小屋がっ!と思ったら、エリザベート女王が使っていたというアトリエでした。
美しい庭をながめながら芸術に没頭できるなんて、いいなぁ。
王さまの池には天も宿る。
満開の藤の木が温室の入り口で歓迎してくれているようです。さあ、いよいよ温室の中に入ります。
「桟橋」という名の温室へ向かう花の廻廊
1886~7年に建てられた「桟橋( Embarcadère )」という名の温室まで続く、いろとりどりの花と緑が溢れる廻廊を歩きます。
中に入ると、生暖かくモワっとします。
ステキ。王さまの子どもたちは、温室で遊んだりできるのでしょうか。
普段は、招待客がここを通って王さまに会いに行ったりするんでしょうねぇ。
温室に入ると、大きなバナナの木!
花咲く小道が連なっています。
つつじがモリモリの不思議オリエンタル
イースターが終わったばかりなので、ストレリチアを鳥に見立ててタマゴの飾りも。
数々の温室を通り抜け、ようやく「桟橋」の温室に到着。
細長い室内の両端に置かれた彫刻は、「夜明け」と「夕暮れ」。ネオクラシック。
温室の一画には東洋的な箱庭があり、ミニチュアの石庭も。写真の青い点々はベルギー漫画『スマ―フ』のフィギュアと、ポップです。
メディニラ(フィリピンの熱帯植物)やゼラニウムを飾る陶磁器は、レオポルド2世が極東旅行の際に中国から持ち帰ったもの。そんな大切なものが触れるところにポン、ポン、と置いてあります。
「桟橋」から外に出て、今度は「ガラスの宮殿」とも呼ばれる温室「冬の庭」に向かいます。
「冬の庭」という名の温室
「冬の庭( Le jardin d’hiver )」は、ラーケン王宮の温室群の中でも最初に建てられたもの(1874~6年)。高いヤシの木も植えられるように、とデザインされています。
入口には再び藤の花。藤棚からは向かいにある宮殿が見えます。
入ると、またまたイースター。
極楽鳥花とも呼ばれるストレリチア。近づいてみると、やっぱり鳥に見えます。
ネオクラシックとアール・ヌーヴォーのはざま。
「冬の庭」は見学のクライマックス。
とにかくドームが巨大で、スケールの大きさに驚きます。写真の下方、柱のあたりに見える黒っぽいのは人影です。
大迫力のドームを見たあとには、可憐な花の咲く小道がお見送り。
さようなら。ごきげんよう。
王立ラーケン温室の基本情報
王立ラーケン温室
Serres royales de Laeken
Avenue du Parc royal, 1020 Bruxelles ( Laeken )
URL : https://www.monarchie.be
開館時間
2017年4月14日(金)~5月5日(金)
基本的に9 :30~15 :30と、20 :00~21 :30の間にオープン。ただし、日によって若干異なるので、必ずベルギー王室の公式サイトで確認を(リンク先ページの一番下にあります)。
午後はとにかく混むので、開場と同時に入るのがおすすめです。
料金
- 成人: 2.5€
- 18歳未満: 無料
チケットの前売りや予約はありません。現金を用意しておきましょう。
アクセス
- トラム: 3、7、19号線に乗って、 De Wand 駅下車(徒歩800mくらい)。
- バス: STIB 社のバス53番か De Lijn社 のバス230、231、232番に乗って、 Serres royales 駅下車(入場口目の前)。
上記地図の目的地はバス停。このバス停の正面が入口で、入場してから温室群にたどり着くまで少し歩くようになっています。
以上、王立ラーケン温室レビューでした。出かけたのは寒い春の日ながら、心に花がいっぱい咲いた1日となりました。