私の子は、外国で幼稚園に通っているいわゆる「ハーフ」。良し悪しはともかく、多国語の聞こえてくる環境で育っています。幼稚園児なので、ママのことば(日本語)もパパのことば(フランス語)もまだまだ発展途上ですが、バイリンガル幼児ならではの楽しいおしゃべりを披露してくれます。
言語教育では、外国語習得中のことばのアウトプットには上達へのヒントがたくさん隠されているといいます。つまり、バイリンガルの子どものおもしろいボキャブラリーや間違えには、子どもに英語や外国語を教える際に役立てられるヒントがいっぱいあるということになります。
そこで、わが家で耳にしたおもしろかわいい表現をピックアップして、みなさんと共有したいと思います。お子さんのバイリンガル教育の参考にしたり、複数のことばが出会って生まれる楽しいお話しとして読んでみてくださいね。
*「ハーフ」ということばについては、意見もさまざま。こちらの記事でいろいろ考えています。
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「ハーフ」と呼んじゃダメですか?
先日、娘の成長について記事を書いたのです ...
めんきゅー
まずは、ロンドンに住んでいたころ登場したおもしろい表現です。
ある週末の昼に家族そろってご飯を食べていたときのこと。パパにジュースをもらった娘が、
と突然言い放ちました。
ママのことば(日本語)にも、パパのことば(フランス語)にも、住んでいる国のことば(英語)にもない単語が、テーブルに飛び出しました。
パパとママは頭の中で必死にボキャブラリーを検索しましたが、そんな単語は辞書にありません。困った両親の顔を見て、不憫に思った2歳児が説明をしてくれました。
それによれば、フランス語のありがとう( merci )と、英語のありがとう( thank you )を足してつくった新語らしいのです。
パパとママにそう言ったあと、2歳児は小悪魔のようにニヤリと笑ったのでした。
習得中の2つのことばを使って遊べる、ということは、子どもがことばの学びを楽しんでいる証拠。逆に言えば、こんな風に遊ぶと子どものモチベーション・アップにつながるのではないでしょうか。
また、大まかに「めんきゅー」の遊びを分析してみると、
- 英語とフランス語の同等表現を比較
- それぞれの音を分解
- それを組み合わせて融合
と、子どもはしっかりと言語分析をしているのが分かります。つまり、ことば遊びをするということは、ことばの構造を考える力が向上することにつながります。さあ、あなたもご一緒に、いざめんきゅーの世界へ!
あくまでも遊びということを忘れずに教えてあげましょう。外で通じることばとは違うということは、しっかり伝えないといけません。
夜のちょうちょ
こちらは、4歳のころのお話しです。
ある日、幼稚園帰りに娘とおしゃべりをしていたときのこと。
「夜のちょうちょ」と言われて、こんな画が脳裏をかすめましたが、
すぐに蛾のことだと気付きました。
フランス語で蛾は「 papillon de nuit (パピヨン・ド・ニュイ)」。直訳すると「夜の蝶」。「蛾」という日本語の単語を知らなかった娘は、フランス語の単語をそのまま日本語に訳したわけです**。
ほかにも「お湯」のことを「あったかいお水(= hot water)」と言うなど、3歳ごろからこのタイプの直訳系単語がよく登場するようになりました。学校や幼稚園での会話が外国語だと、どうしても日本語のインプット量が少なくなります。その分、ボキャブラリーも含めて親がフォローしてあげなければなぁと思わせられることばでした。
**言語教育の専門用語では、言語転移と呼ばれる現象の1つ。既知の言語の法則を、他の言語にあてはめることで起こります。娘の場合は、フランス語や英語で知っている単語を直訳して日本語の単語として使ったことになります。
ぼく
2歳になるころ、娘はある日を境に自分を
と呼ぶようになりました。女の子です。
自分のことを名前で呼ばず、1人称代名詞(わたし、ぼく)で呼ぶにはかなり早い年齢。これはたぶん、家の外でお友だちが英語で「 I 」を使ったり、パパがフランス語で「 je 」を使ったりするのを毎日聞いていた影響があるのでしょう。
最大の疑問は、
なぜ「ぼく」なのか?
家で日本語を話すのは「わたし」と言うママだけ。お外でも「ぼく」と話すような年齢のお友だちや知り合いはいず……
そして見つけた真犯人は、当時熱愛中のアンパンマンでした。
英語の「 I 」やフランス語の「 je 」は、男の子(ぼく)にも女の子(わたし)にも使える代名詞。あんぱんまんの「ぼく」も、娘にとってはニュートラルな1人称だったのでしょう。
親が気にしないものも、子どもにとっては周りすべてがインプット対象。驚くような吸収力を改めて実感しました。
ぼんび、みけ
こちらは固有名詞のお話し。
ディズニーなどの全世界的に有名なキャラクターは、国が違っても姿かたちは一緒。でも時に名前は変わってきます。
ハッとしたのは、登園前のある朝のこと。
ママの頭の中で
と、一瞬のパニック大会議が開催されましたが、娘がTシャツを指差して事態は収集。
バンビはアルファベットで「 Bambi 」で、それをフランス語で読むと「ボンビ」になるという落ちでした。(でも、これ微妙にバンビじゃないの……。サンリオのハミングミントというキャラです。)
同じ原理で世界一のセレブねずみ「ミッキー」だって、フランス語ではこの通り。
ということで、現在は子どもが日本国外で育っても、一部の幼児文化を日本のお友だちと共有できる機会が増えている一方で、キャラの日本語名も教えてあげないと話しが通じないんだなぁと実感。
ママ、がんばって世界の幼児文化にキャッチアップします!
1、2、3、4、5、6
なるべく日本の文化に触れてほしいと思い、娘は3歳の頃からベルギーで合気道を習っています。
正座をして礼をしたり、受け身の練習をしたり、ライトに楽しんでいるのですが、ある日衝撃の事実が発覚。
私ぱんた、昔は大学で外国人相手に日本語を教えたこともあったような気がしますが、なんと4歳児から、
数字の読めない日本人
というレッテルを貼られてしまいました。
なぜ「ロク」が「ホク」になったかというと、フランス語の「 r 」の読み方が関係しています。日本語の6は、ローマ字で書くと roku 。それをジャック先生がフランス語風にのどの奥の方を鳴らす「 r 」で発音したので、あらあら「ロク」じゃなくて「ホク」ですわよ、マダム♪ということになった次第です。
まとめ
いくつかの国のことばを同時に学ぶのは、大変だけれど楽しいもの。それぞれのことばが影響しあって、ときに習得の邪魔をしたり、ときに習得の助けになったりもします。
親はそんなことも頭に入れながら、子どもが楽しく日本語も外国語も身に着けられるよう、うまく合いの手をいれていけると理想的だなぁと思います。